翌朝、朝食を済ませ宿を後にした六人は、真っ直ぐ村長の家へと向かうことにした。
 宿の女将によると、ここからそう遠くはないらしい。

「ふわぁ〜まだ眠いぃぃぃ〜…」
 歩き始めて数分、不満気に呟くエマにすかさずアシュレーが駆け寄ってくる。
「大丈夫? 僕がおぶってあげようか?」
「……っは、お前にそんな筋力あるのか?」
 エマが何か答えるより早くルゥクがからかいの声を上げ、いつもの如くルゥクとアシュレーの口喧嘩が始まる。ここからはもうお決まりのパターンだ。
 仲裁役の雲美が止めに入ろうとするのをエマがニヤニヤしながら引き止め、少し離れた所からクリスタルが傍観している。
 アムリエルは毎日のように見られる光景に半ば呆れながらも、懐かしいこの空気の心地よさに思わず笑みをこぼした。

 …と、不意にアムリエルの視界にあるものが飛び込んできた。まさかと思い、皆に声を掛ける。その声につられた五人が一斉にアムリエルの指し示す方向に顔を向け、そして沈黙した。今まで見てきた村の景観に全くそぐわない何とも悪趣味な屋敷が一行の前に堂々と建っている。
「まさか、ここが村長ん家じゃないよねぇ…?」
 皆が思った嫌な予感をすかさずエマが口にする。
「…いや、ここだ……。」
 クリスタルは平然とこう返し、呆然と屋敷を見上げる五人を置いて一人、屋敷の方へと歩みを進める。
「どうする?」
「…どうするったって行くしかしょうがないんじゃないか?」
「そうだね。外観で人を判断しちゃいけないし。案外いい人かもよ?」
「そうよ。それに私達は仕事で来たんだから。」
「じゃあ、急ご。クリス先行っちゃったし。」
 五人はお互い顔を見合わせながら軽く息を吐くと、先を行くクリスタルに続いて屋敷へと足を踏み入れていった。



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